STAAD.Pro Help

TR.32.10.1.11 2012年版IBCに従った応答スペクトル仕様

このコマンドは、2012年版ICC仕様のInternational Building Code(IBC)およびASCE 7-10に従って、RESPONSE SPECTRUM荷重を指定、適用し、動解析を実行するために使用できます。コマンドの入力要求に基づき、またコードで定義されるように振動数 - 加速度のペアのグラフが計算されます。

一般的な書式

SPECTRUM comb-method IBC 2012 ( TORSION (DECCENTRICITY f20) (ECCENTRICITY f21) ) *{ X f1 | Y f2Z f3 } ACCELERATION 
{DAMP f5CDAMP | MDAMP } ( {LINLOG} ) (MIS f6) (ZPA f7) ({ DOMINANT f10 | SIGN }) (SAVE) (IMR f11) (STARTCASE f12)
注記: SPECTRUMからACCまでのデータは、コマンドの先頭行に含める必要があります。上記の2行目に表示されているデータは、1行目または1つ以上の新しい行に続けて入力でき、末尾には必ずハイフンを付けます(スペクトルあたり最大4行)。

コマンドは、新たな行で始める必要がある次のデータで完了します。

{ZIP f8LAT f9 LONG f13 | SS f14 S1 f15 } SITCLASS (f16) (FA f17 FV f18) TL f19

指定項目:

表 1. 2012年版IBC応答スペクトルに使用されるパラメータ
パラメータ 既定値 説明
DECCENTRICITY f20 1.0 静的偏心の増分係数(例: 重心と剛心間の偏心)
ECCENTRICITY f21 0.05 偏心係数。正値は時計回りのねじりモーメントで、負値は反時計回りのねじりモーメントを示します。
X f1, Y f2, Z f3 0.0 X、Y、およびZ方向に適用される入力スペクトル用の係数。任意の方向、すべての方向が入力可能です。指定されなかった方向は、デフォルトでゼロになります。
DAMP f5 0.05
減衰比。減衰を無視するには、正確に0.0000011の値を指定してください。
  • CDAMPを指定した場合、材料減衰(およびバネ減衰(指定した場合))の値によって決定される合成減衰が使用されます。「 TR.26.2 メンバーとエレメントに対する定数の設定」を参照してください。
  • MDAMPを指定した場合、DEFINE DAMPING INFORMATIONコマンドで定義された方法を使用してモーダル減衰が計算されます。これは、入力ファイルに含める必要があります。「TR.26.4 モーダル減衰の情報」を参照してください。
MISSING f6  

"喪失質量"法を使用するためのパラメータ。モードにおいて表現されない質量の静的な効果を考慮します。 この喪失質量モード用のスペクトル加速度は、長さ/秒2で入力されたf6の値です(この値にはSCALEは乗算されません)。 

f6がゼロの場合は、ZPA f7周波数でのスペクトル加速度が使用されます。f7がゼロまたは入力されていない場合は、33Hzでのスペクトル加速度(ゼロ周期加速度、ZPA)が使用されます。 この計算結果は、モーダル組み合わせ結果のSRSSです。

注記: 任意のスペクトルケースで入力されたMISSINGパラメータは、すべてのスペクトルケースで使用されます。
ZPA f7 33 [Hz] MISSINGオプションでのみ使用するゼロ周期加速度値。入力されない場合、デフォルトの33Hzとなります。値は出力されますが、MISSING f6が入力された場合は使用されません。
DOMINANT f10 1(第1モード) 基本モード法。すべての結果の符号がモード番号f10のみが持つ符号と同じになります。モード番号f10が励起されると、スケール倍された結果が静的変位の結果として使用されます。値が入力されない場合は、モード1がデフォルトです。値0が入力されると、励起方向に最も大きな%寄与を持つモードが使用されます(1つだけの方向係数が非ゼロとなり得ます)。
注記: このオプションとともにSIGNパラメータを使用しないでください。各モードからのスペクトル応答を組み合わせるABSメソッドでは無視されます。
IMR f11 1 荷重ケースにコピーされる個別のモーダル応答(スケーリングモード)の数。デフォルトは1です。抽出された実際のモード数(NM)より大きい場合は、NMにリセットされます。モード1~f11が使用されます。喪失質量モードは出力されません。
STARTCASE f12 最大荷重ケース番号+1 IMRパラメータのモード1の主荷重ケース番号。デフォルトでは、これまでに使用された最大荷重ケース番号に1を加えた値になります。f12が以前のすべての荷重ケース番号より大きくない場合は、デフォルトが使用されます。モード2~NMの場合、荷重ケース番号は前のケース番号に1を加えた値になります。
ZIP f11   緯度と経度、およびそれを用いてSs、S1係数を決定するためのサイト位置の郵便番号 (2012年版IBC ASCE 7-10第22章)
LAT f12   SsとS1係数を決定するために経度とともに使用されるサイトの緯度(2012年版IBC ASCE 7-10第22章)
LONG f13    

SsとS1係数を決定するために緯度とともに使用されるサイトの経度 (2012年版IBC ASCE 7-10第22章)

SS f14   0.2sのスペクトル応答加速度のマッピングされたMCE(2012年版IBC ASCE 7-10第22章)
S1 f15   1秒周期のマップされたスペクトル加速度(2000年版IBC式16-17、2003年版IBC ASCE 7-02 9.4.1.2.4-2節、2006年版IBC ASCE 7-05 11.4.1節)
SITE CLASS f16   IBCコードで定義されているA~Fのサイトクラス(2000年版IBC 1615.1.1節350ページ、2003年版IBC 1615.1.1節322ページ、2006年版IBC ASCE 7-05 20.3節)
FA f17   0.2sにおけるオプションの短周期サイト係数。SCLASSがF(つまり6)に設定されている場合は、値を指定する必要があります。(2006年版IBC ASCE 7-05 11.4.3節)
FV f18   1.0sにおけるオプションの長周期サイト係数。SCLASSがF(つまり6)に設定されている場合は、値を指定する必要があります。(2006年版IBC ASCE 7-05 11.4.3節)
TL f19   長周期遷移周期(秒) (2012年版IBC ASCE 7-10第22章)

comb-method = { SRSS | ABS | CQC | ASCE | TEN | CSM | GRP }は、各モードからの応答を組み合わせて全応答にする方法です。

CQCおよびASCE4-98の方法では、減衰が必要です。ABS、SRSS、CRM、GRP、およびTENメソッドは、スペクトル周期曲線が減衰の関数にならない限り、減衰を使用しません(後述のファイルオプションを参照)。CQC、ASCE、CRM、GRP、およびTENは、近接するモーダル振動数が起因する応答の拡大効果を含んでいます。ASCEは、より代数的な高次モードの和を含んでいます。ASCEとCQC は、より洗練された実際的な方法であり、推奨されます。

SRSS
二乗法の総和の平方根。
ABS
絶対値の和。この方法は非常に安全側であり、最悪なケースの組合せを表します。
CQC
完全2次合成法(デフォルト)。この方法は、モードが近接する場合にSRSSの代わりとして推奨されます。
結果は次のように計算されます。
F=nmfnρnmfm
意味
ρnm
=
8ζ2(1+r)r2/3(1r2)2+4ζ2r(1+r)2
r
=
ωnm ≤ 1.0
注記: クロスモーダル係数配列は対称であり、すべての項が正です。
ASCE
NRC規制ガイド改訂第2版(2006年版)グプタ方式のモーダル組み合わせ、およびモードの剛性部分と周期的な部分が使用されます。矛盾が無い場合は、ASCE4-98の定義が使用されます。モードの周期的減衰部分の近接モード相互作用には、ASCE4-98式3.2-21(ローゼンブリュートの修正版)が使用されます。
TEN
近接するモード合成の10パーセント法。NRC規制ガイド1.92(改訂第1.2.2版、1976)。
CSM
2002年版IS:1893(パート1)の手順に従った近接法。
GRP
近接モードのグループ化方法。NRC規制ガイド1.92(改訂第1.2.1版、1976)。
注記: SRSSが選択されている場合、プログラムは内部的に近接モードがあるかどうかをチェックします。そのようなモードが見つかった場合、CSM法に変更します。CSM法では、プログラムは、すべてのモードが近接しているかどうかをチェックします。すべてのモードが近接である場合は、CQC法に切り替わります。

IBC 2012は、2012年版IBC仕様において定義されるようにスペクトルを計算する必要があることを示しています。 

TORSION
考慮する必要がある重心と剛心の間の偏心によって生じる(水平面における)ねじりモーメントを表します。詳細については、"ねじり"を参照してください。
注記: いずれかのスペクトルケースでTORSIONを入力すると、すべてのスペクトルケースに使用されます。

層レベルの横方向せん断は、全体座標系XおよびZ方向で計算されます。全体座標系Y方向の場合、ねじりの影響は考慮されません。

ACCELERATOIN
加速度スペクトルが入力されることを示します。
注記: IBC/ASCE 7には、変位応答スペクトルの規定はありません。
DAMPMDAMP、およびCDAMP
減衰入力のソースを選択します。
  • DAMPは、f2の値をすべてのモードに使用することを示します。
  • MDAMPは、DEFINE DAMPコマンドが入力された場合、そのコマンドで入力され計算された値を使用し、それ以外はデフォルト値0.05を使用することを示します。
  • CDAMPは、各モードに対して計算された構造物の合成減衰を使用することを示します。異なる材料に対しては、CONSTANT設定の下で減衰を設定する必要があります。
LINEARまたはLOGARITHMIC
入力スペクトル対周期曲線の線形または対数補間を選択して、その周期が与えられたモードのスペクトル値を決定します。デフォルトは線形です。スペクトル-周期曲線は、通常、Log-Logスケールのみにおいて線形であり、そのようなケースでは、対数内挿が推奨されます。特に、スペクトル曲線に2、3点のみが入力されている場合に推奨されます。

FILE filenameを入力すると、減衰軸に沿った補間が線形になります。

注記: すべてのスペクトルケースの最後に入力された最後の補間パラメータが、すべてのスペクトルケースに使用されます。
SIGN
このオプションを指定すると、すべての結果に対して符号付きの値が作成されます。モードの正値の二乗和が、モードの負値の二乗和と比較されます。負値の方が大きい場合、結果に負の符号が与えられます。このコマンドは、ABSオプションでは無視されます。
注意: このオプションとともにDOMINANTパラメータを入力しないでください。
SAVE
このオプションにより、gとラジアン/秒2のジョイント加速度を含む加速度データファイル(モデルファイル名に拡張子.accが付いたファイル)が作成されます。これらのファイルはテキスト形式であり、任意のテキストエディタ(メモ帳など)で開いて表示できます。

設計方法

応答スペクトルの計算方法は、ASCE 7-2010 11.4節で定義されます。 以下は簡単な概略です。

  1. SsとS1を入力(データベースから検索するか明示的に入力)    
  2. 計算

    Sms= Fa × Ss

    および

    Sm1 = Fv × S1

    指定項目:

    FaとFvは、指定したサイトクラスA~Eに応じて、表11.4-1と11.4-2を使用して決定されます。サイトクラスFに対しては、値を与える必要があります。 これらは、ユーザーによって与えられる必要があります。表の値を使用する代わりに、FaとFvの値を設定することもできます。

  3. 計算

    Sds = (2/3) Sms

    および

    Sd1 = (2/3) Sm1

スペクトルは11.4.5節に従って生成されます。

IMR荷重ケース生成の詳細については、「TR.32.10.1.1応答スペクトル仕様 - カスタム」を参照してください。

ねじり

応答スペクトル解析では、すべての応答量(つまり、ジョイント変位、メンバー力、サポート反力、プレート応力など)が、解析で考慮される各振動モードに対して計算されます。各モードからのこれらの応答量は、モーダル組み合わせ方法(CQC、SRSS、ABS、TEN PERCENTなどによる)を使用して組み合わされ、特定の加速方向に対して単一の正の結果を生成します。この計算結果は、地震荷重時に発生する可能性が高い応答量の最大の大きさを表しています。実際の応答は、この最大計算量の負から正の値の範囲で変化することが予想されます。

地震荷重時にこの最大値がいつ発生するか、およびそのときの他の応答量の値がどうなるかについての情報は、応答スペクトル分析では提供されません。たとえば、2つのジョイントJ2とJ3があり、全体座標系X方向の最大ジョイント変位がそれぞれX1とX2であるとします。この場合、地震荷重時にジョイントJ1のX方向の変位が-X1から+X1に変化し、ジョイントJ2の変位が-X2から+X2に変化することが予想されます。ただし、これは必ずしもジョイントJ1のX変位がX1になる時点で、ジョイントJ2のX変位もX2になることを意味するものではありません。

上記の理由により、動的な偏心と不測の偏心(存在する場合)によって発生する各床のねじりモーメントは、モードごとに計算されます。このねじりからの横方向の層せん断が計算され、各モードの全体座標系荷重ベクトルが形成されます。この全体座標系荷重ベクトルを使用して静的解析が実行され、ねじりによる各モードの全体座標系ジョイント変位ベクトルが生成されます。各モードのねじりから得られたジョイント変位は、各モードの応答スペクトル分析から得られた全体座標系ジョイント変位ベクトルに代数的に追加されます。すべてのモードのねじりとともに応答スペクトルから得られる最終的なジョイント変位は、指定されたモーダル組み合わせ方法を使用して組み合わされ、最終的な最大ジョイント変位が得られます。以下のステップを参照してください。

ステップ

以下のステップは、モードごとにねじり条件を含めるために実行します。

  1. 各床の横方向の層荷重が計算されます。
  2. 各床で設計の偏心が計算されます。

    設計の偏心度: edi = f20×esi + f12×bi、ただし、f20 = 1.0およびf21 = (±) 0.05

    指定項目:

    • esi = 床iの重心と剛心の間の静的偏心
    • bi = 地震荷重方向に直交する平面図寸法
  3. ねじりモーメントは床ごとに計算されます。

    Mik = Qik × edi、床i、モードk

  4. ねじりモーメントに対応する横方向の節点力が床ごとに計算されます。これらの力は、ねじりによって加わる層せん断を表します。
  5. 構造の静的解析は、これらの節点力で実行されます。
  6. ねじりからの解析結果(つまり、メンバー力、ジョイント変位、サポート反力など)は、応答スペクトル解析から得られた対応するモード応答量に代数的に追加されます。
  7. ステップ1~6は、考慮されたすべてのモードおよび喪失質量補正(存在する場合)に対して実行されます。最後に、さまざまなモーダル応答からのピーク応答量が、指定された重ね合わせ方法(SRSS、CQC、TENなど)に従って組み合わせられます。

この例の詳細については、「 V. IBC 2012 Response Spectrum」を参照してください。

DEFINE REFERENCE LOADS
LOAD R1 LOADTYPE Mass  TITLE REF LOAD CASE 1
JOINT LOAD
8 FX 49.035
3 6 FX 98.07
END DEFINE REFERENCE LOADS
…
LOAD 1 LOADTYPE None  TITLE RS_X
SPECTRUM SRSS IBC 2012 X 0.333 ACC DAMP 0.05 LIN
ZIP 92887 SITE CLASS E FA 0.900 FV 2.400 TL 8.000