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TR.32.10.1.9 2015年版IS:1893(パート4)に従った応答スペクトル仕様

このコマンドは、2015年版IS:1893(パート4)に従ってRESPONSE SPECTRUM荷重を指定、適用して、工業用構造物や煙突のような構造物の動的解析を実行するために使用できます。

地震荷重ジェネレータは、X、Y、およびZ方向の横荷重を生成するために使用できます。

注記: この機能は、SET Z UPコマンドを使用して、Z軸が鉛直方向に設定されるケースに対しては適用されません
注記: 垂直方向の運動(力がY方向に作用する場合)については、2016年版IS 1893(パート1)コードの6.4.6に従って、水平方向の力の2/3の力にします。

一般的な書式

次の書式のデータは、1行にすべて含めることも、2行または3行に分けることもできます。2行または3行に分ける場合は、それらの行の先頭にACCDOMINANTまたはSIGNコマンドを付ける必要があります。

SPECTRUM comp-method IS1893 2015-P4 LOAD ( TORSION (DECCENTRICITY f8) (ECCENTRICITY f9) ) *{ X f1 | Y f2  | Z f3 } 
{ ACCELERATION | DISPLACEMENT } (SCALE f4) {DAMP f5CDAMP | MDAMP } (MISSING f6) (ZPA f7) (IGNORE f13) 
({ DOMINANT f10 | SIGN }) (IMR f11) (STARTCASE f12) (RSMIN f14 )

次のコマンド(SOIL TYPEパラメータまたは応答スペクトルデータのペア)は別の行に記述する必要があります。

{ SOIL TYPE f11 | *{ P1,V1; P2,V2; P3,V3;…PN,VN } }
注記: スペクトルタイプのオプションであるACCELERATIONとDISPLACEMENTは、2015年版IS 1893(パート4)のカスタムの地盤タイプでのみ使用します。

指定項目:

表 1. 2015年版IS:1893(パート4)応答スペクトルに使用されるパラメータ
パラメータ 既定値 説明
DECCENTRICITY f8 ECC > 0の場合、DECのデフォルトは1.5

ECC < 0の場合、DECのデフォルトは1.0

(オプション)静的偏心(重心と剛心の間の偏心)から動的偏心を求める場合に乗算する係数。適用される荷重は重心に作用するため、静的偏心によって生じる固有のねじりの効果が解析で考慮されます。

注記: IS 1893パート1仕様の条項7.8.2では、重心と剛心の間の動的偏心(静的偏心に動的増幅係数を乗算して計算)によって生じるねじりを不測のねじりとともに適用するように推奨されています。動的偏心は自動的に計算されますが、不測の偏心の量は設定することができます(設定しない場合のデフォルトは地震の方向における床の横寸法の5%です)。詳細については、「ねじりの設計方法」を参照してください。
ECCENTRICITY f9 0.05

不測の偏心の程度を示す係数。この係数は、いずれの建物に対しても0.05に指定されます。ただし、非常に不規則な建物の場合、この係数を0.10に増やすことができます。この係数は、設計の偏心を計算するために外部で提供されます。

不測の偏心は両側に作用する場合があるため、床レベルに作用する横方向力に伴う時計回りまたは反時計回りの不測のねじりのモーメントを考慮する必要があります。f9が正の値の場合は時計回りのねじり、負の値の場合は反時計回りのねじりを示します。

X f1 | Y f2  | Z f3 0 X、Y、およびZ方向に適用される入力スペクトル用の係数。 これらは、標準仕様のスペクトルの場合、[(Z/2)×(I/R)]の積で入力される必要があります。任意の方向、すべての方向が入力可能です。 指定されなかった方向は、デフォルトでゼロになります。2015年版IS 1893(パート4)の条項7.3に基づきます。
SCALE f4 1 設計用水平加速度スペクトルに掛けられる線形スケール係数。この係数は、構造と基礎が、ベースせん断が計算されるレベルにおいて地表面レベルよりも下にあることを示します。
注記: サイト固有のスペクトル曲線を使用する場合、スペクトルデータに掛けるスケール係数がf4の値に掛けられます。通常は、gを長さ/秒2単位に因数分解するために使用します。
DAMP f5 0.05
減衰比。減衰を無視するには、正確に0.0000011の値を指定してください。
  • CDAMPを指定した場合、材料減衰(およびバネ減衰(指定した場合))の値によって決定される合成減衰が使用されます。「 TR.26.2 メンバーとエレメントに対する定数の設定」を参照してください。
  • MDAMPを指定した場合、DEFINE DAMPING INFORMATIONコマンドで定義された方法を使用してモーダル減衰が計算されます。これは、入力ファイルに含める必要があります。「TR.26.4 モーダル減衰の情報」を参照してください。
MISSING f6  

"喪失質量"法を使用するためのパラメータ。モードにおいて表現されない質量の静的な効果を考慮します。 この喪失質量モード用のスペクトル加速度は、長さ/秒2で入力されたf6の値です(この値にはSCALEは乗算されません)。 

f6がゼロの場合は、ZPA f7周波数でのスペクトル加速度が使用されます。f7がゼロまたは入力されていない場合は、33Hzでのスペクトル加速度(ゼロ周期加速度、ZPA)が使用されます。 この計算結果は、モーダル組み合わせ結果のSRSSです。

注記: 任意のスペクトルケースで入力されたMISSINGパラメータは、すべてのスペクトルケースで使用されます。
ZPA f7 33 [Hz] MISSINGオプションでのみ使用するゼロ周期加速度値。入力されない場合、デフォルトの33Hzとなります。値は出力されますが、MISSING f6が入力された場合は使用されません。
DOMINANT f10 1(第1モード) 基本モード法。すべての結果の符号がモード番号f10のみが持つ符号と同じになります。モード番号f10が励起されると、スケール倍された結果が静的変位の結果として使用されます。値が入力されない場合は、モード1がデフォルトです。値0が入力されると、励起方向に最も大きな%寄与を持つモードが使用されます(1つだけの方向係数が非ゼロとなり得ます)。
注記: このオプションとともにSIGNパラメータを使用しないでください。各モードからのスペクトル応答を組み合わせるABSメソッドでは無視されます。
IMR f11 1 荷重ケースにコピーされる個別のモーダル応答(スケーリングモード)の数。デフォルトは1です。抽出された実際のモード数(NM)より大きい場合は、NMにリセットされます。モード1~f11が使用されます。喪失質量モードは出力されません。
STARTCASE f12 最大荷重ケース番号+1 IMRパラメータのモード1の主荷重ケース番号。デフォルトでは、これまでに使用された最大荷重ケース番号に1を加えた値になります。f12が以前のすべての荷重ケース番号より大きくない場合は、デフォルトが使用されます。モード2~NMの場合、荷重ケース番号は前のケース番号に1を加えた値になります。
SOIL TYPE f11 2 地盤タイプ。時間周期、地盤タイプ、および減衰に依存して、このコードの図1に基づいて平均応答加速度係数Sa/gが計算されます。
  • 1 = タイプ1 - 岩盤または硬地盤
  • 2 = タイプ2 - 中間硬地盤
  • 3 = タイプ3 - 柔地盤
custom P1,V1; P2,V2; P3,V3; … Pn,Vn   データは入力の一部であり、"custom"応答スペクトルのスペクトルコマンドのすぐ後に続きます。周期 - 値のペア(セミコロンで区切る)を入力して、スペクトル曲線を記述します。周期は秒、対応する値は加速度単位(現在の長さ単位/秒2)で表されます。データがg加速度単位である場合は、スペクトルデータに掛ける係数は現在の長さ単位に対するgになります(9.81、386.4など)。
注記: SOIL TYPE f11の値を設定している場合は入力しないでください。
IGNORE f13 0.009

(オプション)IS-1893のねじりに関する規定を考慮して除外するモードの有効質量(パーセント)。モデルによっては、有効質量を実質的に無視できるローカルモードやねじりモードが多数存在する場合があります。それらのモードを除外しても、最終的な解析結果が大きく変わることはありません。指定しない場合は、すべてのモードが考慮されます。何も指定されていない場合のデフォルト値は0.009%です。いずれかのスペクトルケースでIGNを入力すると、すべてのスペクトルケースに使用されます。

注記: f14の値が大きいと、解析結果が実際とは大きく異なる結果になることがあります。そのため、IGNOREコマンドを使用する際は注意が必要です。

MODE SELECTコマンドをIGNOREコマンドと一緒に指定した場合、MODE SELECTコマンドで除外したモードとIGNOREコマンドで除外したモードの両方が解析から除外されます。

RSMIN f14 2.0 最小ベースせん断値を取得するために構造の全体の地震重量に乗算する係数(パーセント)の入力に使用します。この値は2015年版IS:1839(パート4)の表2から取得します。この表の値と一致している必要があります。構造のカテゴリ1とゾーン2のデフォルト値を使用します。

最小基本せん断値が計算された応答スペクトルベースせん断を超える場合は、応答スペクトル荷重ケースのすべての解析結果に計算された応答スペクトル基本せん断に対する最小基本せん断の比率が掛けられます。この係数は出力に記載されます。

1893 2015-P4は、2015年版IS:1893(パート4)の手順に従った解析を示します。

comb-method = { SRSS | ABS | CQC | ASCE | TEN | CSM | GRP }は、各モードからの応答を組み合わせて全応答にする方法です。

注記: CQC、SRSS、およびCSMグループ化法は、2015年版IS:1893(パート4)により推奨されています。
SRSS
二乗法の総和の平方根。
ABS
絶対値の和。この方法は非常に安全側であり、最悪なケースの組合せを表します。
CQC
完全2次合成法(デフォルト)。この方法は、モードが近接する場合にSRSSの代わりとして推奨されます。
結果は次のように計算されます。
F=nmfnρnmfm
意味
ρnm
=
8ζ2(1+r)r2/3(1r2)2+4ζ2r(1+r)2
r
=
ωnm ≤ 1.0
注記: クロスモーダル係数配列は対称であり、すべての項が正です。
ASCE
NRC規制ガイド改訂第2版(2006年版)グプタ方式のモーダル組み合わせ、およびモードの剛性部分と周期的な部分が使用されます。矛盾が無い場合は、ASCE4-98の定義が使用されます。モードの周期的減衰部分の近接モード相互作用には、ASCE4-98式3.2-21(ローゼンブリュートの修正版)が使用されます。
TEN
近接するモード合成の10パーセント法。NRC規制ガイド1.92(改訂第1.2.2版、1976)。
CSM
2002年版IS:1893(パート1)の手順に従った近接法。
GRP
近接モードのグループ化方法。NRC規制ガイド1.92(改訂第1.2.1版、1976)。
TORSION
考慮する必要がある重心と剛心の間の偏心によって生じる(水平面における)ねじりモーメントを表します。詳細については、「ねじり」を参照してください。
注記: いずれかのスペクトルケースでTORSIONを入力すると、すべてのスペクトルケースに使用されます。

層レベルの横方向せん断は、全体座標系XおよびZ方向で計算されます。全体座標系Y方向の場合、ねじりの影響は考慮されません。

2015年版IS 1893(パート4)の条項10.4に従ったねじりの設計方法は2016年版IS 1893(パート1)と同じで、ST=4にのみ適用されます。

ACCELERATIONまたはDISPLACEMENT
加速度または変位スペクトルのどちらが入力されるかを示します。応答スペクトルデータの加速度と変位値の関係は次のとおりです。
変位 = 加速度 × ( 1 / ω ) 2
意味
ω
=
2π/周期(周期は秒単位、 ω はサイクル/秒)
DAMPMDAMP、およびCDAMP
減衰入力のソースを選択します。
  • DAMPは、f2の値をすべてのモードに使用することを示します。
  • MDAMPは、DEFINE DAMPコマンドが入力された場合、そのコマンドで入力され計算された値を使用し、それ以外はデフォルト値0.05を使用することを示します。
  • CDAMPは、各モードに対して計算された構造物の合成減衰を使用することを示します。異なる材料に対しては、CONSTANT設定の下で減衰を設定する必要があります。
工業用構造物の応答スペクトル解析について、条項9.4(表5)で推奨されている鋼材とコンクリートの減衰比係数(デフォルト値の5%以外)は次のとおりです。
材質 DBE MCE
スチール 0.02 0.04
鉄筋コンクリート 0.05 0.07
プレストレストコンクリート 0.03 0.05
注記: 複合材構造については、確立された手順に基づいて減衰比係数を決定する必要があります。減衰比係数が評価されていない場合は、減衰の値が小さい材質に対応するものとします。
LINEARまたはLOGARITHMIC
入力スペクトル対周期曲線の線形または対数補間を選択して、その周期が与えられたモードのスペクトル値を決定します。デフォルトは線形です。スペクトル-周期曲線は、通常、Log-Logスケールのみにおいて線形であり、そのようなケースでは、対数内挿が推奨されます。特に、スペクトル曲線に2、3点のみが入力されている場合に推奨されます。
注記: すべてのスペクトルケースの最後に入力された最後の補間パラメータが、すべてのスペクトルケースに使用されます。
注記: LINEARオプションとLOGARITHMICオプションは、カスタムの地盤タイプにのみ使用することができます(応答スペクトルデータのペアを設定する場合など)。これらのコマンドは、SOIL TYPEコマンドを使用する場合は使用しないでください。
SIGN
このオプションを指定すると、すべての結果に対して符号付きの値が作成されます。モードの正値の二乗和が、モードの負値の二乗和と比較されます。負値の方が大きい場合、結果に負の符号が与えられます。このコマンドは、ABSオプションでは無視されます。
注意: このオプションとともにDOMINANTパラメータを入力しないでください。
SAVE
このオプションにより、gとラジアン/秒2のジョイント加速度を含む加速度データファイル(モデルファイル名に拡張子.accが付いたファイル)が作成されます。これらのファイルはテキスト形式であり、任意のテキストエディタ(メモ帳など)で開いて表示できます。

個々のモード応答ケースの生成

個々のモード応答(IMR)ケースは、他のモードとの合成前は、そのモードがスペクトル解析ケースで持つ大きさのスケールを持つモード形状です。IMRパラメータを入力すると、STAAD.Proにより、この応答スペクトルケースの最初に指定された数のモードに対して荷重ケースが作成されます(つまり、5を指定すると、最初の5つのモードに1つずつで5つの荷重ケースが生成されます)。各ケースは、他の主荷重ケースと同様の形状で作成されます。

IMRケースの結果をGUIまたは印刷機能によって確認できます。このため、構造の各点の結果に対する各モードの重要度について評価することができます。おそらく、1つか2つのモードを使用して、1つの領域/床、およびその他の場所を設計することができます。

その後の荷重ケースは、TR.32.11 繰り返し荷重の設定スケールを変えたこれらのモード、静的活荷重、および死荷重を組み合わせて使用して、内部的に整合性のある符号を持つ結果を形成することができます(通常の応答スペクトルの解とは異なる)。モード作用荷重ベクトルは、ω2×質量×スケール倍されたモード形になります。反力は、剛性マトリックスにスケール倍されたモード形を掛けたものを作用荷重から引いたものになります。

繰り返し荷重機能により、モード作用荷重ベクトルを静的荷重と組み合わせて、P-デルタまたは引張りのみとともに静的に解析することができます。

注記: スペクトラムケース用にIMRオプションを入力する場合、そのような各スペクトルケースの後にTR.37 解析の設定 & TR.38 変更の設定を入力する必要があります。

IMR荷重ケース生成の詳細については、「TR.32.10.1.1応答スペクトル仕様 - カスタム」を参照してください。

LOAD 1 LOADTYPE None  TITLE RS_X
SPECTRUM SRSS IS1893 2015-P4 LOAD X 0.0432 DAMP 0.05
SOIL TYPE 1