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D9.C.5 メンバー耐力

AIJ 2002に準拠したメンバー設計とコードチェックは、許容応力度設計に基づいています。その方法は、設計用荷重と力、許容応力度を使用し、適切な材料に関して、使用条件下での設計上の制約を適用することにより、構造メンバーを釣合わせる方法です。メンバー耐力の基本的な指標は、許容引張応力度、許容圧縮応力度など、さまざまな載荷条件におけるメンバーの許容応力度です。これらの指標は、断面の特性、細長比、幅厚比などさまざまな要因に依存しています。ここでは、STAADで採用されているそのような耐力の算出方法について説明します。 

D9.C.5.1 設計機能

H形、I形、L形、チャンネル、パイプ、チューブ、など、利用可能なすべての断面形をメンバー特性として利用可能であり、鋼構造設計を選択するとSTAAD.Proは自動的に断面形に応じた設計手順を採用します。STAAD.Proまたはユーザー定義テーブル(UPTABLE)で利用可能な鋼材テーブルを、メンバー特性に使用できます。

D9.C.5.2 方法

鋼構造設計において、STAAD.Proは日本建築学会設計規準で要求される許容応力と実応力の比較を行います。設計手順は、次の3段階によって構成されます。

  1. 断面特性の計算

    このプログラムは断面特性として、断面積A、Y軸とZ軸を基準とした断面二次モーメントIyy およびIzz、およびサンブナンのねじり定数 Jを、組立鋼材テーブルから抽出します。その後、このプログラムは適切な式を使用して、弾性断面係数Zz およびZy、ねじり断面係数Zx、および断面二次半径iy およびizを計算します。

    I形、H形、およびチャンネル断面については、次の式を使用して、曲げに必要な断面二次半径を計算します。 

    i = I i / A i
  2. 応力と許容応力の計算

    長期荷重における構造用鋼材の許容応力は、次の表に示すFの値に基づいて決定されます。

    表 1. テーブル:Fの値(N/mm2
      建設構造用鋼材 一般構造用鋼材 溶接構造用鋼材
    厚さ SN400

    SNR400

    STKN400

    SN490

    SNR490

    STKN490

    SS400

    STK400

    STKR400

    SSC400

    SWH400

    SS490 SS540 SM400

    SMA400

    SM490

    SM490 Y

    SMA490

    STKR490

    STK490

    SM520 SM570
    t≤ 40 235 325 235 275 375 235 325 355 400
    40< t ≤ 100 215 295 215 255 - 215 295* 335 400

    * F = 325 N/mm2(t > 75 mmの場合)

    注記: 短期荷重に対してメンバーをチェックする際には、第3章で説明されている応力の組み合わせを使用しますが、この章で指定されている許容応力が50%増加する可能性があります。

    応力と許容応力を次の方法で計算します。

    1. 軸応力:

      実際の引張応力、

      FT = 荷重 / ( A × NSF )

      意味
      NSF
      =
      設計パラメータとして入力された引張の有効断面積係数

      実際の圧縮応力、FC = 荷重 / A

      許容引張応力、ft

      • = FYLD / 1.5(長期荷重の場合)
      • = FYLD(短期荷重の場合)
      意味
      FYLD
      =
      設計パラメータとして入力された降伏応力

      許容圧縮応力、fc

      f c = { [ 1 0.4 ( λ Λ ) 2 ] F ν ただし、 λ Λ 0.277 F ( λ Λ ) 2 ただし、 λ > Λ

      = fc × 1.5 (短期荷重の場合)

      意味
      Λ
      =
      π 2 E 0.6 F
      ν
      =
      3 2 + 2 3 ( λ Λ ) 2

      実際のねじり応力、ft = ねじり / Zx

      意味
      Zx
      =
      J / max(tf, tw)
      tf
      =
      フランジの厚み
      tw
      =
      ウェブの厚み
    2. 曲げ応力:

      Myによる圧縮曲げ応力 

      ( Fbcy) = My / Zcy

      Mzによる圧縮曲げ応力

      ( Fbcz) = Mz / Zcz

      Myによる引張曲げ応力

      ( Fbty ) = My / Zty

      Mzによる引張曲げ応力

      ( Fbtz ) = Mz / Ztz

      意味
      Zcy,Zcz
      =
      y軸とz軸のそれぞれを中心とした曲げによる圧縮の弾性断面係数
      Zty,Ztz
      =
      y軸とz軸のそれぞれを中心とした曲げによる引張の弾性断面係数
      注記: ウェブは、H形、I形、チャンネル断面の Zz の計算では無視されます(MBGパラメータが1の場合)。

      Myに対する許容曲げ応力

      (fbcy) = ft

      Mzに対する許容曲げ応力

      (fbcz) = { 1 - .4 x (lb / i)2 / (C λ2)} ft max

      = 89,000/ (lb × h / Af )

      短期荷重の場合、fbcz = 1.5 x (長期荷重のfbcz)

      意味
      C
      =
      1.75 - 1.05 (M2 / M1) + 0.3 (M2 / M1)2
      • Myに対する許容曲げ応力、fbty = ft
      • Mzに対する許容曲げ応力、fbtz = fbcz
      注記: パラメータCBを使用して、Cの値を直接指定することができます。
    3. せん断応力

      せん断応力は、次の式で計算されます。

      qy = Qy / Aww

      意味
      Aww
      =
      ウェブのせん断断面積 = せいとウェブ厚さの積

      qz = Qz / Aff

      意味
      Aff
      =
      フランジのせん断断面積 = 全フランジ面積の2/3倍
      fs
      =
      許容せん断応力、Fs / 1.5、Fs = F / √(3)
  3. 設計要求の確認:

    ユーザーによって与えられるRATIOの値(デフォルトは1.0)は、設計要求のチェックに使用されます。 

    次の条件が日本建築学会規準を満足するか確認します。すべての条件に対して、計算値はRATIOの値を超えてはいけません。RATIOの値を超える場合は、プログラムはその断面が不合格であるとのメッセージを与えます。

    条件:

    1. 軸引張応力比 = FT / ft
    2. 軸圧縮応力比 = FC / fc
    3. 圧縮と曲げの組合せ圧縮応力比 = FC / fc+Fbcz/fbcz+Fbcy/fbcy
    4. 圧縮と曲げの組合せ引張応力比 = (Fbtz+Fbty-FC) / ft
    5. 引張と曲げの組合せ引張応力比 = (FT+Fbtz+Fbty) / ft
    6. 引張と曲げの組合せ圧縮応力比 = Fbcz/fbcz+Fbcy/fbcy- FT/ft
    7. Yのせん断応力率 = qy / fs
    8. Zのせん断応力率 = qz / fs
    9. von Mises応力率(von Mises応力をチェックするように設定している場合)= fm/(k⋅ft)

D9.C.5.4 軸引張に対する許容応力

引張の許容軸応力は、日本建築学会設計規準5.1(1)節に基づいて計算されます。軸引張を受けるメンバーでは、引張荷重がメンバーの引張耐力を超えてはいけません。メンバーの引張耐力は、メンバー面積に基づいて計算されます。STAADは、与えられたメンバーの引張耐力を、ユーザー設定の有効断面係数(NSF – デフォルト値は1.0ですが入力値を変えることで変更可能、表8B.1を参照)を基に計算し、メンバーの選定とコードチェックへと進みます。

D9.C.5.5 軸圧縮に対する許容応力

圧縮メンバーの許容応力は、5.1(3)節の手順に従って決定されます。圧縮抵抗は、細長比(Kl/r比)の関数であり、ユーザーは、KY、LY、KZ、LZなどのパラメータを修正することで細長比の値を制御できます。ユーザー設定の有効座屈長さの値がない場合は、メンバーの実際の長さが使われます。細長比のチェックが、日本建築学会規準11章に規定される値に対して行われます。

D9.C.5.6 曲げに対する許容応力

曲げ引張と曲げ圧縮の許容応力は、脚の長さ、フランジの厚さ、圧縮フランジの支持点間距離(デフォルトはメンバー長)などの要因に依存します。曲げ(圧縮と引張)許容応力は、規準の5.1 (4)節によって計算されます。

D9.C.5.7 せん断に対する許容応力

せん断耐力は、ウェブのせい、ウェブの厚さなどの関数です。許容せん断応力は、規準の5.1 (2)節に従って計算されます。